映画『アナと雪の女王』が地上波で放送されました。

言わずと知れた「アナ雪現象」と呼ばれる大ブームを巻き起こした作品で、2014年3月の劇場公開からおよそ3年、満を持しての地上波初放送でした。

僕は観るつもりはなかったのですが、うちの恋人が僕の家で録画していたので、渋々ながら一緒に観ました。うちの恋人は映画館で観てますが、僕は初めてです。以下、感想。

作品と商品

その前に、映画に関する評価について少し。

先日、日本アカデミー賞の発表がありました。最優秀アニメーション作品には、新海誠の『君の名は。』ではなく、片渕須直の『この世界の片隅に』が選ばれました。

このことが、ちょっとした議論を呼んでいます。

早い話が、あれだけ売れた『君の名は。』が選ばれないのはおかしいということです。確かに、歴史に残るほどの興行収入を叩き出している作品です。「売れる作品=いい作品」とするなら、『君の名は。』は、「ものすごくいい作品」ということになります。

でも、「売れる作品=いい作品」ではないのです。

映画には(映画に限ったことではありませんが)、作品と商品という二つの側面があります。興行収入が評価されるのは、商品としての側面に限った話です。

作品の価値

では、作品の評価基準は何かと言えば、新しい価値観を持っているかどうかです。

価値観というのは、我々が価値判断するときの物差しとなるもの。この物差しをたくさん持っている人は、いろんなものの価値を認めることができる人ということになります。豊かなわけです。

人間の文化は、これまでたくさんの価値観を生んできましたから、たくさんの価値観をすでに持っています。でも、既存の価値観では、未知のものの価値を認めることができません。文化をさらに進化させていくためには、新しい価値観が必要なのです。

おそらく、『この世界の片隅に』は新しい価値観を持っているのに対し、『君の名は。』はそうではないのでしょう。僕はどちらも観ていませんが、察することは容易です。

『君の名は。』は、予告編を見ただけで、どういう内容の映画なのかが分かりますよね。青春時代のキュンキュンする感情を呼び起こす映画なのだろうと。

しかし、他方の『この世界の片隅に』は、よく分からない。

分からないということは、既存の価値観に当てはまらないということです。新しい価値を持っている可能性が高い。分からないからこそ観る価値がある。

僕が宮崎駿作品を見ないのは、あの人は、かつて築き上げた既存の価値観を駆使して商品を作っているところがあるからです。宮崎駿作品で観る価値があるのは、『未来少年コナン』と『風立ちぬ』だけ。それ以外は、時給をもらわなければ観ることはありません。

僕は、映画を、商品として消費するより、作品として学びたいんです。

世の中には、様々な問題が山積されています。既存の価値観で解決できるなら、そもそも山積されません。解決できなかったから積み上がってるんです。解決には、新しい価値観が必要です。

だったら、新しい価値観を得たいと思うのが、人情ではないですかね。

本題

率直に言えば、面白かったです。

ただ、新しい価値観はありません。冒頭5分で姉妹の愛を描きたいことが分かります。そのためには、姉妹の断絶が必要です。エルサの魔法とアナの結婚話がそれ。

作品としての価値は、姉妹の愛がどういったものかによります。

血のつながった姉妹の「無償の愛」なら、さんざん語られ尽くしてきた話ですから、価値はありません。これがもし、無償の愛以外の姉妹の愛を提示できたなら、すごい作品だったでしょうね。

でも、残念ながら、作品としての価値はなかったということになります。

とはいうものの、面白いと感じたのは、やはり歌が多かったからでしょうね。つい見入ってしまうわけです。エンターテイメントとしては、完成されていると思います。ガンダムの富野由悠季監督が「アナ雪の商業的成功は楽曲の力」と言っていたことが実感できました。

人間は、歌うんです。

子供のころ、何でも歌にしますよね。友達を誘いに行ったときの「○○くーん、あーそーぼー」とか、じゃんけんをするときとか、つい歌にしてしまう。人間の根源的な性なんです。

そこを突かれてしまうと、面白いという他ありません。

エンディング

あと、あのエンディングについて少し。

ノーカット版と銘打っておきながら、エンディングが、フジテレビのアナウンサー・同局の番組の出演者・一般人が歌うバージョンに差し替えられたことに批判が集まっているようです。

それに対し、フジテレビは「賛否両論」と言っていますが、それは違いますよ。

映画って、エンディングのエンドロール含めて映画ですよね。映画館で上映されるとき、それがカットされたり別のものに差し替えられたりしないことからも明らかです。

だとしたら、「ノーカット版」は偽りです。「賛否両論」という次元の話ではない。

まとめ

そんなわけで、『アナと雪の女王』が面白かったという話でした。

実は、ディズニー映画を観たのは、これが初めてです。あれだけ東京ディズニーリゾートへ行っておいて、ウソみたいな話ですが、本当の話です。

もっとも、うちの恋人が僕の家でディズニー映画の録画を観るときにそばにいたことはあるのですが、開始5分ぐらいで寝ちゃうんです。ついこないだ、『ベイマックス』を観ていたものの、「ベイマックスじゃねえよ」という台詞があったことぐらいしか覚えていません(違う)。

その点、『アナ雪』は、ディズニーのショーを観てるみたいでよかったです。歌がメインのディズニー映画が他にもあったら、ちょっと見てみたいですね。