夕飯のあと

湯呑みに口をつけた。

啜るように口に含む。熱い。喉を通ると、汗が噴き出す。冷房を入れる季節なのに、気づけば湯を沸かしてしまう。ふうっと長い息を吐いたとき、扇風機の風が背中を撫でた。

テレビへ目をやる。しばらく眺めたが、私には面白さがわからない。でも、いつもつけていたから、何となく。

新聞を広げ、老眼鏡を掛けて、爪を切る。

パチン。パチン。乾いた音が響く。

片手を終えたところで、やめにした。明日することがなくなる。

立ち上がって、腰に手を添え、体を反らした。反らしたというほど反らせてはいない。ただ上を見上げただけかもしれない。それで十分だ。

湯飲みを持って台所へ行く。

流しには、夕食の食器が待っていた。水を出し、スポンジで洗う。数はない。あっという間に済んだ。それらを拭いて、棚へしまう。

と、割れた茶碗に目が向いた。

あれは私の茶碗だ。落として割った。いまは、あんたのを使っている。

割れた茶碗を捨てられない。まだ、姿勢を持っている。

(了)

奥付

夕飯(ゆうはん)のあと

作者
QU
公開日
2026年10月4日