八時すぎに目が覚めた。

体を起こそうとするもあちこちが痛い。ちょっと海へ行ってきただけなのに。溜め息をついた。スマートフォンに手を伸ばす。SNSを開いてタイムラインを流した。ここ何日か投稿していないのに、タイムラインは流れている。それだけを確認して閉じた。

体の痛みを堪えつつ階段を降りると、姉の鞄が無造作に置かれていた。

雑なやつだと思いながら、鞄を跨いだとき、ジャラ付けされたキーホルダーの群れに、カッパカエルを見つけた。

リビングの入口で姉と鉢合わせした。

目も合わせないし、何も言わない⋯⋯だろうと思っていた。

「ありがとう」

背後からそう聞こえた。振り返ったが、姉はこちらを見ていない。

「お金、ありがとう」

届いたかどうかはわからない。

姉は鞄を持ち上げると、「あんた、趣味悪いわ」と言った。「うっせーわ」と返した。姉は鞄を少し高く掲げて、「私は、嫌いじゃないけど」と言った、気がした。キーホルダーの群れが小さく、賑やかに音を立てた。

黙って朝食を摂ったあと、部屋へ戻った。

ドアを閉めた途端に涙が溢れた。そのままベッドに潜った。ベッドはもう冷えていた。その冷たさに自分を溶かした。

気がついたら、昼になっていた。

軋む体を起こして、ベッドから出た。窓へ近づき、スポーツカー柄のカーテンを開けた。目を細めて、外の眩しさに耐えた。

(了)