三 布切れ

鞄から細い布切れの束を取り出した。森で迷わないようにと、木の枝に結びつけるつもりだった。まったく使わなかった。

魔法使いと言えども、食事はするだろうし、そのための買いものにだって行くだろう。森の奥深く、迷うようなところに居を構えるわけがない。布切れを丸めて床に放り投げた。

藁床に仰向けになる。天井の黴の跡を見つめながら、気持ちは期待と落胆の間を行き来した。どうすればよかったのか、考えても答えは出なかった。

ゾルダンの表情と言葉には、悪意も敵意も感じなかった。かといって、善意や好意を感じたわけでもない。凪いだ湖面のように、ただ穏やかだった。相手をしてくれたが、相手にされなかった。そんな感じがした。

「お話できるようにならないと」

それが結論だった。藁床から起きて、散らばった布切れを片づけた。