五 重なり

それから、私は折を見てゾルダンを訪ねた。さすがにクグロフを毎回持参することはできなかったが、一人暮らしでは大変だろうと、家にある野菜をこっそり持っていったりもした。

ゾルダンはゾルダンで、私を歓迎してくれていたように思う。

あるとき、ヒポクラスという飲みものを出してくれたことがある。透き通ったワインにも驚いたが、乳鉢ですり潰された白い粉がワインの表面で雪のように消えていく様子は本当にきれいだった。私が「それは魔法ですか?」と聞くと、ゾルダンは「私は魔法は使いませんよ」と断ってから、「でも、雪みたいに儚くて、美しいですね」と、私の心の中と同じことを言った。

「そんなに大きな魚がいるんですか?」

「そうですねえ。魚というより獣に近い生き物のようですが」

海には、小屋ほどの大きさの魚がいるらしい。ゾルダンは、アリストテレスがどうの大アルベルトゥスがどうのと言っていたが、私にはよくわからなかった。

ゾルダンの話を聞いていると、祖父を思い出すことがある。

幼い私にわかるよう、少し間を置きながら、話を続けてくれた、その間の心地よさを思い出す。時折見せる目尻の深い皺も。