二
ガラガラの電車に揺られる。
視線をさまよわせていると、向かいのシートの起毛の跡が目についた。座っている座面を指でなぞると色が変わる。きれいな真円を描こうと何度もなぞったが、うまく描けなかった。隣の車両から人が移ってきたのに気づき、手の平を黒板消しのように使ってその痕跡を消した。
電車は、速度を落とし、ターミナル駅へと入っていく。ビル群の影が次々と車内をよぎる。キイッと音を立てて電車は止まった。少し遅れて体が振られた。
ドアチャイムが鳴り、ドアが開く。十人ほどが乗り込んできた。脇にじんわりと汗を感じる。そのあと、僕はどうしていたのだろう。目的の駅までのことはあまり覚えていない。