六
変な名前のスーパーで買った菓子パンを食べた。
普段よく食べるものでも海で食べると格別かもしれないと期待したものの、いつもの菓子パンだった。ペットボトルのカフェオレも、いつものカフェオレだ。
海の上にタンカーが二隻浮かんでいる。眺めているうちに、互いの距離が広がっていくことに気づいた。よく見ると、それぞれがじわりと動いている。止まっているわけではなかった。
「人が、乗っているんだ」
当たり前のことをつぶやいた。
それは、そうだろう⋯⋯。
父は、わりと早朝に家を出る。母は、自分はぐうたらだと言いながらも午前中は家にいないことが多い。姉は、大学とバイト先を行き来し、クラスメイトは、学校で授業を受けている。
膝を抱えて頭を伏せた。
何しに来たんだろう。
海はただ海だった。
靴底の砂がじゃりっと音を立てる。その音だけが耳の中に残った。